30 11月

佐野美術館 日本刀初心者講座上級コース

-支部会員の枡田さんからご投稿いただきました-

十一月日本刀初心者講座上級コース

新雪を山頂に戴く富士山を遠くに望みながら麗らかな好天に恵まれた二十三日の日曜、
十一月の日本刀初心者講座に行ってまいりました。十一月の講座は解紛記の第七回目で
テーマは粟田口物でした。数の少ない粟田口物を纏めて見る機会の無い小生にとっては、
ワクワクするような一日を過ごす事ができ満ち足りた思いで帰途につきました。
以下鑑賞刀の感想です。

鑑定刀
一号刀 無銘・国安 刀
度々登場する名刀 磨上げられて踏ん張りがなく、身幅尋常で反り高い。地鉄、小板目に
小杢目交じり地沸つき詰む。刃文、直調に焼き低く小丁子・小乱れ・小互の目交じり、
刃縁に沿って飛び焼き連なり、物打ち付近に二重刃かかる。帽子、焼き細く小丸に返る。

二号刀 無銘・吉光 短刀
尋常な内反りの姿、重ね厚く、庵棟。地鉄、小杢目つみ明るい。表裏に護摩箸を深く彫る。
刃文、区から低く焼出す直刃小沸つき、刃中金筋入り明るく冴える。帽子、表は小丸に、
裏は中丸に品良く返る。

三号刀 国光・新藤五 短刀
冠落造。地鉄、小板目に地景入り、地沸つく。三つ棟。刃文、細直刃締まり、小沸つく。
刃中に金筋頻りにかかる。彫り、素剣に梵字、裏、薙刀樋、連れ樋を彫る。帽子、小丸に返る。

四号刀 無銘・延寿 刀
身幅広めに先幅もあり重ね厚く健全な刀姿。棒樋を掻く。地鉄、板目が詰み、白けごころが
ある。匂口締まりごころの中直刃に小足入る。帽子、大丸に返る。

五号刀 因州住景長 太刀
身幅尋常に中反り高い。地鉄、板目流れ肌立ち、整わず、かねに黒みがある。
刃文、中直刃ほつれ、刃中葉、足が僅かに入る。帽子、一枚風に焼き崩れる。片側は焼きの
返りが深い。粟田口物に交じると逆に目立てしまうのは致し方ない。
何故黒庵さんは粟田口物の付として景長を入れたのだろうか。

雑記
・ 解紛記の粟田口の特徴
1. 体配 来より棟の庵が深い。三つ棟の中筋が広い。来程切っ先のふくらは深くない。
2. 地鉄 鍛えは細やか。地色は来より青み深く、潤いがあり、澄む。
3. 刃文 中直刃を焼く。沸・匂も来より沸深く匂を敷き深みがある
4. 帽子 来より小丸が小さい。返りも少し短い。焼詰もある。
5. 彫 彫りが深い。剣・梵字・香箸・樋を掻く

・ 解紛記では山城物の記述で来物が粟田口物に先んじているのは、粟田口物の数が少なく、
来物が多い事がその原因にあるようだ。粟田口物の付に延寿と因州景長を入れているのも奇妙。
・ 解紛記の記述に粟田口物を「体配ようちに作るにより、用にはたつはまれなれども」とあり、
粟田口物は使用上では役に立たないとあるが、黒庵さんの粟田口物への辛口のコメントは
興味深い。粟田口物は宮中や公家の注文打ちであるので、実用性より優美さを重視したのであろう。
・ 粟田口の沸は沸の粒子が重なり立体感がある。来物は沸が線上に並んだ直線型。
・ 粟田口吉光には希に庵棟もある。
・ 帽子の焼きが崩れるのは日本海側の刀工に見られる(因州景長)