19 12月

京都国立博物館永藤一氏所蔵名刀展のご報告

-支部会員の枡田さんからご投稿いただきました-

京都国立博物館永藤一氏所蔵名刀展のご報告

 年の瀬、京都へ墓参に帰った序でに、いつの間にかモダンな建物に変身していた京都国立博物館で
開催中の常設展に行って来ました。市内に約千六百あると言われている寺院の多い京都は仏教美術の
宝庫と言ってもよく、京都国立博物館の収蔵品も矢張り仏教美術が柱です。一階にある広い第一室
には平安・鎌倉時代の仏像の一級品が数々展示され圧巻でした。
 今回最も期待して訪れたのは昭和時代の刀剣愛好家として夙に有名な関西屈指の名コレクター
永藤一氏が蒐集した日本刀の名品と華やいだ京文化の粋とも言える古清水の名品を見る事でした。
 永藤一氏のコレクションが展示されている一階の金工室はさほど大きくはなく、展示数も決して
多くはありませんでしたが、相州伝の短刀を中心に流石に健全な名品ばかりで見応えがあり、寧ろ
展示数が少ないだけ時間を掛けてじっくり拝見出来き、充実した一時を過ごす事が出来ました。
 金工室の入口正面には重要美術品の「乱れ新藤五国光」が、展示室中央に正宗の短刀が展示され、
今回の展示品の中で新藤五、正宗が展示の主役と直ぐに推察出来ました。以下展示順にガラス越しで
拝見した大まかな感想についてご紹介したいと思います。

1.短刀 国光(乱新藤五) 重要美術品
 内反りやや寸延びの姿で、振り袖茎に二字銘がある。地鉄は板目がざんぐりし、地沸つき、地景が
 交じる。刃文は浅い小のたれ調に乱れ、金筋がかかる。小丸に帽子が上品に返る

2.短刀 正宗(在銘)
 比較的小振りな姿。地鉄は板目つみ、地沸つく。刃文、細く焼出しその上をのたれとのたれを間遠く
 直刃で繋ぐ。飛焼き交じる。帽子は地蔵風。金梨子地三葉葵文合口拵。
 四口ある在銘の短刀の一口。

3.短刀 相州住秋広 永和二 重要文化財
 常に見る秋広の反りの浅い小振りの姿。地鉄、板目肌立ち、地沸つき、地景交じる。地鉄が明るく
 素晴らしい。刃文のたれに大模様ののたれ交じり、全体に飛焼がかり、金筋・砂流しかかる。
 帽子は乱れ込み尖りごころに返る。地に素剣の下に蓮台を彫る。地刃が明るく秋広の優品。
 小さ刀拵がつく。

4.刀 金象嵌銘・義弘(薫山花押) 伊達家伝来
 身幅やや広く元先の幅差が開かず、中切先となる大磨上の体配。地鉄、板目つみ、地沸つく。刃文、
 広直刃調に足・葉頻りに入る。棒樋を掻く。伊達家の御家名物「知久江」

5.短刀 実阿
 内反りのついた小振りの短刀姿で茎は振り袖となる。茎穴は一つ。地鉄、大板目流れ肌立ち地色に
 黒味がある。刃文、細直刃。帽子、小丸に短く返る。彫、角留の棒樋に添樋。在銘の太刀は観る機会が
 あるが、短刀を観るのは初めて。まるで実阿の太刀を短刀に置き換えたような出来でした。珍品

6.短刀 築州住左 重要文化財
 浅く反りのついた小振りな姿、フクラ枯れる。茎は先細くなる。地鉄、板目に地景入り、地沸がつく。
 刃文、のたれに互の目交じり、刃縁明るく冴える。地刃健全な名品。展示品の中でも一際目に留まりました。

7.短刀 金重 応安二年三月
 寸延びの大振りな短刀姿。茎に二字銘がある。地鉄、板目肌立ち、白けごころがある。刃文、のたれに
 互の目乱。帽子、大丸に返る。金重銘の短刀を初めて拝見しました。在銘の作品は希れで、それだけに
 珍品中の珍品と言えます。

8.短刀 村正
 フクラの枯れた寸の短い小振りな体配。たなご腹の茎。地鉄、板目よく練れる。刃文、元を焼落とし風に、
 その上はのたれに互の目交じりの刃を焼く。帽子、中丸深く返る。棒樋を深く彫る。 合口拵